[書評]Lean UX

おすすめ度:★★★★☆(UXを中心にソフトウェア界隈のリーンを学べる)

UXを無駄なく作り込むプラクティス

UX (User eXperience) をLeanに改善する方法を解説する書籍です。

新規事業や新製品の企画、プロジェクトマネージャー、プロダクトオーナー、中間管理職あたりが想定読者だと思われます。

本ページでは前提知識、概要、私が特に気になった点を紹介しいたます。

UXとは

UX(User eXperience)を日本語訳すると「ユーザ体験」です。
たとえばある商品のUXというと、その商品自体が与えるメリットに限らず、広告や包装が醸し出す上質感、購入しやすさ、廃棄にあたっての分別の簡単さ・・・・といった商品に出会ってから別れるまで全体の諸々の<体験>です。

普段の消費者の立場に立って考えるとUXの重要さがよくわかります。
仮に性能がとても良い掃除機があったとしても、UXが低い、つまり広告や見た目があまりにチープだったり、ものすごくマイナーな家電屋でしか売られていなかったりすると、実際なかなか買おうと決めづらいのではないでしょうか。

だから、現代のビジネスにおいては商品そのものの魅力だけでなくUXが重要だといわれています。

Leanとは

Leanとは無駄を排除して効率的に仕事を進める姿勢です。
そもそもの言葉の由来は、MIT(マサチューセッツ工科大学)がトヨタの生産方式を体系化してLean生産方式と名付けたことが始まりです。Lean生産方式とは無駄なく効率的にモノを生産する方法です。
Leanの考え方はその後世界的にヒットして製造現場以外にも適用されるようになりました。
リーン・スタートアップ(無駄のない起業)、リーン・アナリティクス(無駄のないデータ分析)、リーン・ソフトウェア開発(無駄のないソフトウェア開発)などです。
本書のLean UXは、無駄のないUX改善、といった意味です。

本書が前提とする問題意識

新規事業開発や新製品開発では、どのような人がユーザとなるのか、そのユーザが抱えている課題はなにか、といった点が不明確な状態でスタートを切ることになります。新規事業、新製品なのだから当然ですね。
かといって、上記の点や、製品の細かい仕様、販売チャネルなどをいきなり明確にしようとすると製品の設計や製造への着手までに長い時間がかかってしまい競合に遅れを取る場合があります。また判断の誤りに気がつくのが製品が世に出た後、つまり販売開始後になってしまい、誤った前提で作られた製品なので結局予想ほど売れないという可能性もあります。

本書の概要

Lean UXでは、次の手順でUXを洗練させていくことによって上記の問題が発生しないようにします。
  1. 開発の最初期にユーザ像とユーザのニーズの仮説を立てる
  2. MVP(Minimum Viable Product。実用上最低限の機能を持つ製品)をユーザ候補に提供してユーザの反応を確認し、仮説の確からしさを検証する
  3. 上記を何度も繰り返してUXを洗練させていく
従来手法との最大の違いは、
従来は最初にユーザ像、ユーザのニーズ、製品仕様、販売チャネル、利益の上げ方などを最初に全て決めてからそれに従って開発していくという予測主義的なアプローチ(最初に妥当と思われる予測を立てて、その予測に従って行動するアプローチ)を取るわけですが、
Lean UXでは上記のサイクルを繰り返すことにより、「本当にこの仮説が正しいのか?」と何度も自問自答することで経験主義的なアプローチ(経験して得た知識に基づいて行動するアプローチ)を取る、という点です。

本書では言及されていませんが、私の知る限りだと業種によっては伝統的に行われている手法ではあります。
たとえば洗剤メーカーや食品メーカーは、社員自身がユーザになりえますので、試作品を社員に提供して意見を聞くのを繰り返しているそうです。

本書はそうした「やりやすい」業種以外でもLean UXを実現できるように手順やその遂行に必要なマインドセットを解説しているという点が一番の売りだと思います。

本書には明記されていませんが、本書全体に通底する問題意識として、「新規事業の最大のリスクはニーズがないこと」という意識が感じられます。
ニーズの見極めのためにユーザの生の声を初期段階からどんどんと聞いていく、というのが本書の基本的な姿勢です。

ユーザ像やニーズの仮説の立て方

ではどうやってユーザ像やニーズの仮説を立てればよいのか。
一例として、本書では、次の6つの質問に答えることで仮説を立てることを奨めています。

1. ユーザは誰ですか?
2. 私たちの製品はユーザの仕事や生活のどの部分にフィットしますか?
3. 私たちの製品が解決する課題は何ですか?
4. 私たちの製品は、いつ、どのように使われますか?
5. どの機能が重要ですか?
6. 私たちの製品の外観とふるまいはどのようなものですか?

本書には他にも具体的なテクニックが載っています。
たとえばペルソナ分析のフォーマットなどがあります。

以上のように、具体的テクニックから大まかな考え方までが載っている書籍です。

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